シュールストレミング
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
両方とも前のリビジョン前のリビジョン | |||
シュールストレミング [2020/11/20 22:00] – ↷ バグダッド電池 から シュールストレミング へページを名称変更しました。 moepapa | シュールストレミング [2020/11/20 22:02] (現在) – moepapa | ||
---|---|---|---|
行 1: | 行 1: | ||
- | ====== | + | ====== |
- | バグダッド電池(バグダッドでんち)とは、現在のイラク、バグダッドで製造されたとされる土器の壺である。 | + | |
- | 電池であるという意見と、そうではないとする意見が存在する。 | + | シュールストレミング(スウェーデン語: |
- | {{: | + | スウェーデン語で「スール (sur)」は「酸っぱい」を、「ストレンミング (strömming)」は「バルト海産のニシン」を意味する。フィンランド語のhapansilakkaも同じ意味で、hapankalaは「酸っぱい魚」を意味する。 |
- | 1932年(1936年説も有)にバグダッド近郊のテルであるホイヤットランプファで発掘された。出土したのは民家遺構の中で、呪文が書かれた3つの鉢と共に置かれていた。1938年に、「これはガルバニ電池の一種ではないか」とする論文がイラク国立博物館のドイツ人研究者ヴィルヘルム・ケーニヒ (Wilhelm König) の手によって発表された。その後、1978年に西ドイツのヒルテスハイム博物館で開催された「シュメール・アッシュール・バビロン展」で、「パルティア時代の電池と推定される器具」として展示されたことで世界中に広く紹介されることとなった。 | + | {{: |
- | 大きさは高さ約10cm、直径約3cm程度。粘土を焼いて作った素焼きの土器の中にアスファルトで固定された銅の筒が入っており、その中にアスファルトで塞がれたシリンダーの中に鉄製の棒が差し込まれている。また、底に何らかの液体が入っていた痕跡が残っていた。 | + | 旬に得られる食料を保存し生き延びようとする、古き知恵のひとつ。 |
- | 発掘当時は用途が不明の出土物であったとされているが、電池メーカーのボッシュによる復元実験で電解液として酢やワインを用いた結果、電圧0.9 - 2ボルト程度で発電された。パルティア時代にも使用可能な電解液とされる液体が次々に試され、作製されたレプリカにおいて、微弱ながらもそれらが実際に電流を発生させることが示された。ただしこの実験は発見された状態と違い開放状態で、それも原理だけを復元した(壷やシリンダーを復元したわけではない)状態で行われており、発見時と同じくアスファルトで口に封をした場合はすぐに電流が止まってしまう。 | + | 中世ヨーロッパでは食肉の代わりに塩漬けの魚(タラ、ニシン)が盛んに流通していたが、保存には塩が必要だった。北欧に位置するスウェーデンではニシンは豊富に獲れたが、製塩に必要な日射も薪も乏しく、塩は貴重品だった。 |
- | 使用目的としては、電解液にブドウジュースを用いた実験にて、シアン化金の溶液に浸した銀製品を数時間で金メッキ加工させることに成功しており、装飾品に金や銀のめっきを施すため(実際その近辺からメッキされたとしか言いようがない装飾品が出土している)の道具とする説が提唱されたが、電気を使わずとも水銀アマルガム法などでめっきを施す方法は古くから知られており、根拠としては薄い。他にも、呪文が書かれた壷と共伴したことから、感電による宗教体験を演出する装置や、電気療法のための装置という説など諸説あるが、真の目的は不明とされている。 | + | バルト海で4月から5月にかけて獲れた産卵期直前のニシンを材料とし(これはかつて、勅令で定められていた)、頭とワタを除いたそれを90kg入り樽の薄い塩水に漬け、12-18℃で10-12週間発酵させる。商品によって切り身のままのもの、頭や腸も使っているもの、カズノコが一緒に入っているものなどがあるが、カズノコは食べるべきでないとされている。 |
- | 電池である可能性を最初に指摘したケーニヒは壷を紀元前250年頃のパルティア朝時代に作られたものと主張したが、ケーニヒの本職は画家であって、考古学者ではない。壷の様式はサーサーン朝様式で、同様の構造の壷がチグリス川河畔のセレウキアや、パルティア時代からも首府であったクテシフォンなどサーサーン朝時代の遺跡から多数発見されている。実際の製造時期は紀元後3世紀から7世紀にあたり、考古学的に壷が明らかにサーサーン朝の様式にもかかわらず、ケーニヒはパルティア時代のものだと誤って主張していることになる。 | + | 発酵食品であるために食べ頃があり、販売の解禁日は8月の第3木曜日とされているがこれは涼しい北欧の場合で、日本の夏の気温下では注意する必要がある。開缶して魚体が液状化したものは、分解が進みすぎている。 |
- | セレウキアを発掘したリロイ・ウォーターマン、クテシフォン遺跡を発掘したエルンスト・クネルは、同様の壷を発見していて、中にパピルスの繊維を確認している。また、壷が建物の基礎部分から発見されていることから、実際は宗教的な祈祷文を入れて埋める壷であり、金属棒は巻物の芯棒、周りの金属は金属製の保護容器である可能性が高い。 電池によく似た構造になったのは巻物に使われたパピルスが腐敗して無くなり、鉄製の芯棒が残ったためでたまたま電池に似た構造になっただけである、としている。 | + | 19世紀に缶詰が実用化されて以降、缶の中で発酵を継続させる形式のシュールストレミングが出現してきた。缶詰は7月に製造され、8月後半に食べ頃となる。 |
+ | |||
+ | 通常、缶詰は保存食として製造されるため、内容物は滅菌される。しかしシュールストレミングは、日本の漬け物のように発酵状態を保ったまま缶詰にされ、缶の中で発酵が進行する。密封状態で発酵させるため、発生したガス(二酸化炭素など)圧によって丸く膨らむ。こうした状態の缶はスウェーデン各地のスーパーマーケットでよく見られる。殺菌を行わないことから日本では缶詰の定義から外れ、JAS法などに基づき「缶詰」と標記できない。 | ||
+ | |||
+ | 開封する際は、そのガスによって汁が噴出すると臭いが広範囲に拡散するため、屋外で開けることが推奨されている。 噴出を抑える手段として、水中で開封することも行われるなど開け方はいくつかあるが、缶を傾け内部にガスだまりを作ってそこに缶切りを突き立てる方法が最も一般的である。 | ||
+ | |||
+ | また、発酵食品であるため保管環境により匂いや味が大きく異なり、インターネット上で行われている「試食会」等のレポートでは、その反応にかなりの差が見られる。 | ||
+ | |||
+ | 2014年2月、ノルウェーにて25年間にわたり放置された缶詰が小屋から発見され、缶詰の専門家が出動して処理にあたった。爆弾処理班への相談も行ったが、出動はされなかった。中身は具材の原形を留めず液体状で臭気もひどく食用に堪えられなかった。 | ||
< | < | ||
- | <iframe width=" | + | <iframe width=" |
</ | </ | ||
+ | |||
+ | フィレの場合は皮から身を剝がして、骨付きの場合は骨と皮を取り除き、塩気が強いので、ジャガイモやトマト、スライスした紫タマネギとGräddfil(スウェーデンのサワークリーム)とともにTunnbröd(トゥンブロードと呼ばれるスウェーデンの薄いパン)に載せて食べる。 | ||
+ | |||
+ | 室内で食べると臭気がなかなか消えないので、屋外で食べることが多い。場合によっては食べる前にウォッカなどの酒類、または牛乳などで洗うこともあり、アクアビット(北欧の蒸留酒)で洗うと3~4割臭みが減るという。 | ||
+ | |||
+ | 主にスウェーデン北部で食べられ、南部などそれ以外の地域での消費量は少ない。 |
シュールストレミング.1605877209.txt.gz · 最終更新: 2020/11/20 22:00 by moepapa